不思議迷宮録シレン

-絶望の谷-


「 うっ・・・・!

 あれって・・・・」

10F 断崖の岩屋・・・・

開始早々モンスターハウス&埋蔵金という強運・・・・!

かつてない僥倖・・・・!

「 ククク・・・・何・・・・これ・・・・?

 貰っちゃっていいわけ・・・・?

 全部・・・・?」

避けるも殺すも思いのまま・・・・

先読みし放題・・・・透視の腕輪様々・・・

袋のネズミ・・・・!

網中の魚・・・・!

まさに一網打尽っ・・・・!

入れ食いもいいとこっ・・・・!

そして埋蔵金と同フロアに

つるはしという大盤振る舞い・・・・!

「 もう資金は充分・・・・充分だが・・・・

 せっかくの青天井だ・・・・

 貰っとくか・・・・貰える物すべて・・・・!」

「 う・・・・!

 あれは・・・・!」

「 ケチ・・・・!

 座頭ケチじゃねぇか・・・・!」

「 ああ・・・・!

 ダンナっ・・・・!ダンナじゃねぇですかい・・・・!」

ケチは・・・・不遇をかこっていた・・・・

目盲の達人という肩書きを失い・・・・村人の信頼はゼロ・・・・

按摩の仕事からもはずされ・・・・

与えられる役割といえば

モンスターに倒させてレベルアップという・・・・

餌食と言うか捨て駒と言うか・・・・そんな・・・・

危険の割に報われない生け贄のような役割だけ・・・・!

「 ダンナ・・・・何か今日はなんか・・・・

 雰囲気違わねぇですかい・・・・

 漂ってる・・・・勝算ありって感じの・・・・そんな雰囲気・・・・」

「 勝算ならあるぞ・・・・ケチ・・・・!

  かつてない勝算・・・・・・・!」

「 えっ・・・・?」
「 この勝機を逃さず・・・・テーブルマウンテン・・・・

 その頂上を必ず刺す・・・・今までのような澱んでくぐもった

 絵空事・・・・卓上の理論なんかじゃなく・・・・!」

「 俺たちは這いずり回ってきた・・・・!

 こばみ谷という釜の底を・・・・ウジ虫のように這い回り・・・・

 乱数テーブルに踊らされ・・・・

 踏みつぶされては振り出しに戻され・・・・」

「 ぐっ・・・・!」
「 這いずり回って・・・・いい加減気づいたはずだろ・・・・!

 不思議のダンジョンは運否天賦じゃ殺せない・・・・!

 強運が足下に転がってくるのを頭を垂らして待つのは愚図・・・・

 自分から築いていくしかないんだ・・・・理を・・・・勝つ仕組みを・・・・」

「 ダンナぁっ・・・・! あっしも・・・・!

 あっしもついて行きます・・・・!

 ついて行かせてくだせぇ・・・・!」

たとえそれが捨て駒・・・・!

ダンナの言う理の一部だとしても・・・・!