不思議迷宮録シレン

-絶望の谷-


( こいつが こばみ谷のボス・・・・魔蝕虫か・・・・!

 ってこたぁ、いよいよ以て大詰め・・・・!

 取るべき戦略は一つ・・・・!)

「 開幕バクスイ・・・・! そしてジェノサイド・・・・!

 シンプルで 創意工夫の欠片も見あたらないが・・・・

 火力は究極・・・・! 致死性は充分だ・・・・!」

ジェノサイドの巻物を手に

フロアのボス・・・・魔蝕虫を探すシレン・・・・!

「 ふぅ・・・・黄金郷まで辿り着いた男だから

 どんな猛者かと期待していたが・・・・ 

 拍子抜け・・・・とんだ買いかぶりだ・・・・!

 めぐすり草の持ち合わせも無いとは・・・・!」

なんだ・・・・?

こいつ・・・・?

「 ならば・・・・例えバクスイ中であっても

 ワナ多い地形での空振りは怠らないことだ・・・・

 死ぬぞっ・・・・!」

その心の贅肉っ・・・・

下らぬ見栄が

後々お前の首を絞める・・・・!

「 ぐっ・・・・ワナの罠・・・・!」
どうする・・・・!?

このまま魔蝕虫を探し続けるのは危険っ・・・・!

かと言ってバクスイを使った以上、作戦は変更し難い・・・・!

「 どうしたどうしたっ・・・・!

 開幕3ターン目から長考か・・・・?

 先が思いやられるぞ・・・・それでは・・・・!」

( 御託・・・・詭弁・・・・二枚舌もいいとこっ・・・・!

 奴の言葉に惑わされるな・・・・!)

まずは保険っ・・・・!

手頃なモンスターに 身がわりの杖を振っておく・・・・!

「 これで覚醒後の応急処置は出来た・・・・!

 あとは親玉のほうをどうするか・・・・」

バクスイ解除まで時間がない・・・・!

やはり 捨て身・・・・強行突破か・・・・?

「 よせよせ・・・・!

 できもしない大言は・・・・!」

風来人は持たざる者・・・・!

ダンジョン以外に拠り所のない乱数テーブルの傀儡かいらい・・・・

しかし、その何も持たぬこと・・・・捨て身であるが故に・・・・

親玉ボスを撃つのだ・・・・!

「 だが、風来人は・・・・

 そうは簡単に捨て身になどなれぬ・・・・!」

的を射た口上っ・・・・!

罠 犇めくフロアで無作為に動き回れば・・・・ その結果は自明・・・・!

事実、シレンは13Fの大部屋モンスターハウス・・・・

敵陣の真っ只中で大型地雷を踏む 失態を犯している・・・・!

嫌でも 慎重にならざるを得ない・・・・!

「 考えろ・・・・!

 突破口はいくらでもあるはず・・・・!

 アイテムの数だけっ・・・・!」

罠が増えて 歩くのもままならないっていう この状況・・・・!

だからこそ逆っ・・・・!逆転の発想っ・・・・!

逆に罠で埋め尽くす・・・・!

フロア全体をっ・・・・!

バクスイ解除ターンまで目一杯 

ワナの罠を踏み続けるシレン・・・・!

「 ここだ・・・・!

 このタイミング・・・・!」

食す・・・・!

カラクロイドの肉っ・・・・!

足の踏み場なく敷き詰められた罠っ・・・・!

その姿を現す・・・・!

( あとは 敵が踏んでくれるのを待つだけ・・・・!

 地雷でも空腹スイッチでも・・・・!)

次々と罠の餌食となるモンスター・・・・

がっ・・・・!

バクスイが解除された偽シレンは・・・・

あっさりとデロデロの湯を浴び消滅・・・・!

囮が消えたことにより 矛先は再びシレンへ・・・!

「 魔蝕虫はどうなった・・・・?

 この様子じゃあ、即死系トラップには

 掛からなかったようだが・・・・!」

メッセージ欄に表示されなかったことを考えると・・・・

恐らく、掛かったのは バネ や トラばさみ といった非殺傷の罠・・・・!

( ヤツの位置は以前不明のままだが・・・・

 だからといって こちらから出向くことはしない・・・・!

 黙って向こうが罠にはまるのを 待つのがベスト・・・・!)

根比べだ・・・・!

ここからはサバイバル戦・・・・!

「 ククク・・・・実によくわかるよ・・・・私には・・・・

 君が何を考え・・・・その戦略に至ったか・・・・」

がっ・・・・!

釣れるのは雑魚のみ・・・・!

親玉ボスは一向に網に掛からない・・・・!

そして腹時計・・・・!

シレンの持久力尽き始める・・・・!

「 そしてそれは、それほど間違っていない・・・・ほぼ正しい・・・・!

 いや・・・・ひょっとすると・・・・ この不思議のダンジョンにおける

 定石のような考えかもしれぬ・・・・」

ぐっ・・・・!

そうか・・・・!

このフロアの入り組んだ地形っ・・・・!

そして、モンスターの「まっすぐ俺のほうへ向かう習性」とが

吹き溜まりを形成・・・・硬直状態を作った・・・・!

つまり、このまま待っても俺に勝ちはない・・・・!

自ら進んでおびき寄せるしかないってこと・・・・!

漕ぎ出せっ・・・・!

勝負の大海へっ・・・・!

「 しかし・・・・残念ながら・・・・

 その『定石』という地点が・・・・」

最も浅はかなのだ・・・・

ダンジョンでは・・・・!

画面外からガイコツまおうの魔法弾・・・・!

シレン・・・・おにぎりと化すっ・・・・!

「 なんてことっ・・・・!忘れてた・・・・!

 変身中は盾効果の恩寵を受けられない・・・・!

 当然、やまびこの効果も失われるっ・・・・!」

「 ”口なし”の杖を振られたら最後っ・・・・!

 勝利の望みは限りなく薄くなる・・・・!

 退避だ・・・・ここはひとまずっ・・・・!」

「 ククク・・・・言うまでもなく・・・・

 このダンジョンに必勝法のようなものはない・・・・がっ・・・・

 ビギナーはすぐ掲げたがるのだ・・・・確信めいたものを・・・・!」

( 減らず口っ・・・・!聞き耳持つな・・・・!

 まだ主導権はこちらにある・・・・!)

元の位置に戻り体勢を立て直すシレン・・・・

再び硬直状態・・・・!

おにぎり状態でも、幸いカラクロイドの能力は続くらしく・・・・

急襲してきたガイコツは罠の海に沈んだが・・・・

おにぎり状態解除・・・・!

元のシレンの姿に・・・・!

「 しかし・・・・自力で辿り着いたアイディアは 本人にとっては

 特別でのォ・・・・ 大した考えでなくとも 大変な閃きに感じられ・・・・

 なんの吟味もなく あっさりそれに沿おうとする・・・・!

疑い続けること・・・・

不安であり続けることが・・・・

ダンジョンで生き残るために

最も必要な心構えなのに・・・・!

「 カラクロイドの肉は今・・・・ 

 その効力を失った・・・・!」

残念 残念・・・・ 

残念至極・・・・!